MICHIGAERU AGRI — STRATEGY & ACTION PLAN
🍅 農業事業 戦略ロードマップ 2026–2030
企業型トマト農場までの実行計画。「いつ・何を・どこまでやるか」と「進む/止まるの判定基準」を先に決めて公開します。(2026年8月版・実験の進行に合わせて改訂)
0. 基本方針 — 3つのルール
- ① 同一方式で貫く: 栽培はすべてのフェーズで「ロックウール培地×点滴かけ流し×環境データ記録」(商業ハウスの世界標準)。オフィスの2株も1haも同じ管理体系にすることで、データと技術がフェーズをまたいで接続する。人工光の閉鎖型植物工場はやらない(トマトでは光の電気代が売上を上回るため)
- ② 数字のゲートで進む: 各フェーズに事前に定めた判定基準(ゲート)と撤退基準を置き、クリアしたときだけ次の投資をする。感覚・意気込みでフェーズを進めない
- ③ 借りてから買う: 土地・施設は「借りて検証→数字が出たら取得」の順。特に農地は一般法人でもリース方式で参入できるため、初期は賃借で固定費とリスクを最小化する
1. 全体タイムライン — 5トラック×四半期
行動指針の核。縦5トラック(栽培/土地・施設/販路/資金・制度/組織・学習)を並行で進める。
| 時期 | 🌱 栽培 | 🏗 土地・施設 | 🛒 販路 | 💰 資金・制度 | 👥 組織・学習 |
2026 Q3 いまここ |
実験機組立→通水テスト→9月播種 |
—(オフィス1㎡) |
— |
実験は自己資金(約30万円) |
毎日の計測ルーチンで養液管理を体で覚える |
| 2026 Q4 |
育苗→定植→誘引・受粉。12月初収穫 |
群馬の借地・中古ハウス探し開始(農地バンク=農地中間管理機構・市町村農政課・農業公社に照会) |
地場スーパー・直売所・飲食店の売場調査(何がいくらで売られているか台帳化) |
補助金の情報収集開始(国の施設園芸支援・県の園芸振興事業)。一般法人の農地リース参入の要件確認 |
先進農場の視察2〜3件(県内外の企業型トマト農場)・研修プログラムの検討 |
| 2027 Q1 |
連続収穫・糖度/収量データ蓄積→3月データ集計 |
借地候補の現地確認・水道/電気/排水の確認 |
収穫物で社内外テイスティング(味の客観評価を残す) |
Phase 1予算の確定(数百万円規模) |
栽培担当の体制決め(誰が週何時間張り付けるか) |
| 2027 Q2 |
🚦ゲート判定→Phase 1着工。50株システム設計・資材調達 |
借地契約・中古ハウス改修(雨よけ・遮光・電源・水源) |
直売所への出荷者登録・飲食店5〜10件に訪問開始 |
市の農業経営相談窓口に事業計画を持ち込む(後の認定・補助金の布石) |
現地作業のパート採用検討(週2〜3日) |
| 2027 Q3 |
8月播種(促成長期どり作型に移行): 9月定植→11月〜翌6月収穫の商業標準サイクル |
設備の増強(自動潅水の多系統化・環境モニタ常設) |
出荷規格・パッケージ・価格表の初版を作る |
翌年度の補助金公募スケジュールを把握し申請準備 |
作業マニュアル化開始(誘引・芽かき・収穫を人に渡せる形に) |
| 2027 Q4〜2028 Q2 |
50株で収量・品質の再現実験(㎡収量を商業レンジに乗せる) |
Phase 2用地の絞り込み(1,500㎡級・借地/取得の比較)。温室メーカー2〜3社から概算見積 |
テスト販売の実績づくり: 直売所・マルシェ・飲食店で単価と反応を実測。西洋野菜の少量検証も開始 |
認定農業者の取得申請(市の農業経営改善計画)→ 制度融資・補助金の資格を確保 |
雇用1名の具体化・自社の栽培SOP v1完成 |
| 2028 Q3〜Q4 |
🚦ゲート判定→Phase 2。300〜500㎡分の育苗計画 |
温室建設着工(低コスト耐候ハウス+環境制御。補助金採択なら1/2圧縮) |
スーパー・卸との取引条件交渉(年間供給計画を提示できる状態に) |
公庫融資(農業経営基盤強化資金等)+補助金+自己資金の資金三層を組成 |
正社員/専任1〜2名体制へ |
| 2029 |
300〜500㎡で通年生産1作目→2作目 |
🚦ゲート判定→1,000㎡へ増築(同一敷地内) |
契約販売比率50%超を目標に。糖度データ付き販売の武器化 |
増築分の設備投資(数千万円規模)の調達 |
パート含め3〜5名体制・栽培主任の育成 |
| 2030〜 |
1,000㎡で経営が回ることを実証 |
🚦ゲート判定→1ha計画の始動(用地・フェンロー型温室・数億円投資) |
量販の年間契約+外食チェーン。販売チャネルの分散完成 |
1ha投資の資金調達(融資・リース・出資の組み合わせ) |
農場長+10名規模の組織設計 |
🚦=事前に決めた数字ゲートで進退を判定するポイント。時期は現時点の計画値で、ゲート未達なら後ろにずれる(ずらすこと自体は失敗ではない)。
2. フェーズ別の詳細 — 目標・投資・判定基準・撤退基準
Phase 0: 東京オフィス実験機 進行中
2026年8月〜2027年3月 / ミニトマト2株・約1㎡ / 点滴かけ流し+フルデータ記録
約30万円投資(済)
毎日10分計測ルーチン
5種のデータ取得
このフェーズで取るもの
- EC・pH・給排液管理の運用感覚(養液栽培の本体スキル)/株別の段別収量・糖度と管理値の関係
- 作業時間の実測(誘引・芽かき・受粉・収穫)/変動費の実額(電気・肥料・培地・水)/病害虫の出方と対処経験
🚦 進むゲート: 秀品率70%以上・平均糖度8以上・2株とも枯死なく7段以上収穫 → Phase 1へ
🛑 撤退・やり直し基準: 2株とも途中枯死、または管理起因の重大事故(漏水・病害蔓延)が2回以上 → 原因を潰して2作目を回す。2作連続で失敗したら方式・体制を根本から見直す
Phase 1: 群馬・生産実験(20〜50株)
2027年Q2〜2028年Q2 / 借地+中古ハウス活用 / 商業の作型(促成長期どり)に移行
200〜500万円投資規模
買わない(借地)
8月播種→11月〜6月収穫の作型
主要アクション
- 土地は借りる: 農地バンク・市町村農政課・農業公社経由で中古ハウス付き農地を賃借(一般法人はリース方式で農地参入可能。取得と違い要件が軽い)
- 作型を商業標準へ: オフィスの通年栽培から、施設トマトの王道「夏播き・秋定植・冬春収穫」へ切り替え。ここで初めて「季節」と戦う
- 10倍化の歪みを見つける: 2株→50株で自動化が壊れる箇所(給液系統・作業動線・データ記録)を洗い出す
- 販売の練習: 直売所・マルシェ・飲食店でテスト販売し、単価・歩留まり・物流コストを実測。西洋野菜の少量栽培もここで検証開始
- 制度の土台づくり: 認定農業者を取得(市に農業経営改善計画を提出)。以後の制度融資・補助金の資格になる
🚦 進むゲート: ㎡あたり収量が商業レンジ(15kg/㎡換算)に到達・労働時間/株がPhase 0比で30%以上改善・テスト販売で平均単価1,000円/kg以上の実績 → Phase 2へ
🛑 撤退基準: 2作やって収量が商業レンジの6割未満、または販売単価が卸値水準(600円/kg)を超えられない → 事業構造を再設計。撤退しても損失は数百万円で止まる設計
Phase 2: 小規模生産(温室300〜500㎡)
2028年Q3〜2029年 / 用地1,500㎡級を確保(このタイミングで初めて取得を検討) / 雇用開始
2,000〜4,000万円投資規模
年600〜1,500万円売上目安
1〜2名雇用
主要アクション
- 用地確定: Phase 3の増築まで見込んだ1,500〜2,000㎡(区域区分・用途地域・地目・水源・電源・排水の6点チェック)。借地継続と取得を比較して決める
- 温室建設: 低コスト耐候ハウス+環境制御(1〜2万円/㎡帯)を軸に、温室メーカー相見積。国の施設園芸系補助金(例: 強い農業づくり系の交付金)採択で投資を1/2圧縮する前提で公募時期から逆算
- 資金三層: 自己資金+制度融資(日本政策金融公庫の農業融資等)+補助金で組む。認定農業者資格がここで効く
- 販路の契約化: テスト販売実績を持ってスーパー1〜2社・外食5〜10店と年間供給の交渉。糖度・鮮度データ付き出荷を差別化の武器に
- 組織化: 栽培SOPを整備して専任1〜2名に権限委譲。代表が張り付かなくても回る状態を作る
🚦 進むゲート: 通年で営業黒字(減価償却前)・契約販売比率50%・栽培が専任者だけで回る → Phase 3(1,000㎡増築)へ
🛑 撤退基準: 2年連続で償却前赤字 → 増築を凍結し、規模維持で黒字化に専念 or 施設売却・撤退を検討
Phase 3→4: 本格化(1,000㎡)→ 商業生産(1ha〜)
2029年〜2030年代前半 / 同一敷地増築→大型用地+フェンロー型温室
数千万→数億円投資規模
年1.5〜3億円売上目安(1ha)
10名規模組織
- 1,000㎡は「Phase 2の延長で増築」、1haは「別次元のプロジェクト」として扱う(用地取得・フェンロー型ガラス温室・CO2/暖房/自動環境制御・選果場つき作業棟・数億円の資金調達・農場長人材)
- 1ha判断の前提: 1,000㎡での実証済みユニットエコノミクス(㎡あたり売上・原価・人時)を10倍にスケールして成立すること。ここまでの全データがこの1枚の計算書のためにある
- 年商数億〜10億の最終構想は、この1haユニットの複製(3〜5ha)+高単価品目(西洋野菜等)の複線で描く
🚦 1ha着工ゲート: 1,000㎡の年間実績で「償却後黒字」かつ人時生産性が計画値を満たす → 大型投資へ
3. トラック別の深掘り
🏗 土地・施設 — 「借りる→建てる→買う」の順番
- 法規の3点チェック(物件ごと): ①市街化区域/調整区域 ②用途地域(温室・農業施設は工業系/無指定が建てやすい) ③地目(農地なら転用許可、農振農用地はほぼ不可)。調整区域は原則建築不可だが農業用施設は例外ルートがあり、認められれば土地代を大きく抑えられる(自治体事前協議が必須)
- 農地の参入形態: 一般法人は「賃借(リース)」なら要件が軽く参入可能。「所有」には農地所有適格法人の要件(役員の農業従事等)が必要になるため、当面はリース+非農地(雑種地・宅地)取得の組み合わせで設計する
- 建てるもの: 栽培棟=温室(Phase 2は低コスト耐候ハウス、Phase 4はフェンロー型ガラス温室)+作業棟=建屋(育苗・選果・冷蔵・事務)。コンクリ建屋は「光の要らない工程」専用
- インフラの隠れ条件: 水源(水道/井戸の水量と水質)・電源容量(環境制御と冬の暖房)・排水先。土地選定時に必ず現地確認
🛒 販路 — 「作ってから売る」ではなく「売りながら作る」
- Phase 1から少量でも売り始め、単価・歩留まり・配送コスト・リピート率を実測データ化する(販売もデータ経営の対象)
- チャネルの育成順序: 直売所/マルシェ(練習と現金化)→ 飲食店直販(単価と関係構築)→ スーパー・卸の年間契約(ボリュームの柱)
- 差別化は「糖度・鮮度データ付きのトマト」。毎日の計測データがそのまま営業資料になる、というのがこの事業設計の核
- 複線として西洋野菜(ルッコラ・チコリー等)をPhase 1で少量検証。レストラン直販と相性が良く、トマトの契約が育つまでの高単価枠を担う
💰 資金・制度 — 使える制度を前提に投資を半分にする
- 認定農業者(市町村の農業経営改善計画の認定): Phase 1中に取得。制度融資・多くの補助金の入場券
- 補助金: 国の施設園芸・産地支援系交付金(施設整備の1/2補助が典型)+群馬県・市町村の園芸振興事業を毎年度ウォッチ。公募時期から逆算して建設スケジュールを組む(採択前着工は対象外が原則)
- 融資: 日本政策金融公庫の農業融資(認定農業者向けの長期低利資金)を軸に、設備はリースも比較
- 投資の刻み方: 30万(P0)→数百万(P1)→2〜4千万(P2)→数千万(P3)→数億(P4)。各段階の投資は「前段階のデータで正当化できる範囲」に限定する
👥 組織・学習 — 属人化させない
- 2026年内: 先進農場視察(県内外の企業型トマト農場・大規模施設園芸)と研修プログラムの検討。「見たことがある」と「知らない」の差は投資判断で致命的に効く
- Phase 1: 作業のマニュアル化(SOP)を最初から。誘引・芽かき・収穫を「人に渡せる手順」にする
- Phase 2: 専任1〜2名+代表は経営・販路に軸足。栽培データはクラウドで常時共有し、リモートでも状態がわかる体制(本業のIT力を投入する場所)
- Phase 4: 農場長人材の確保が最大のボトルネック。Phase 2〜3の期間中から探索・育成を始める
4. リスクと向き合い方
| リスク | 影響 | 手当て |
| 栽培技術が期待値に届かない | フェーズ遅延 | 各フェーズの数字ゲートで小さく検証。遅延は失敗ではなく仕様 |
| 販売単価が想定を下回る | 収益計画崩れ | Phase 1から実売で単価を実測。契約化前に量産投資をしない |
| 建設費・資材の高騰 | 投資超過 | 相見積・補助金前提の逆算・低コスト耐候ハウスから始める |
| 気象災害(台風・雪・猛暑) | 施設/作物損害 | 耐候仕様の選定・園芸施設共済/収入保険への加入・作型での回避 |
| 病害虫の大発生 | 収量激減 | 抵抗性品種+物理防除を基本に、発生ログを資産化して次作に反映 |
| キーパーソン依存 | 運営停止 | SOP化・データのクラウド共有・複数人体制を早期に |
| 本業との資源競合 | 推進力低下 | 投資の刻み(各段階の上限額)と撤退基準を事前定義(このページ自体がその宣言) |
5. いまの状況と直近90日のTODO
2026年8月時点
実験機の資材約70品目の調達完了。組立→株なし通水テスト→9月播種の直前段階。
直近90日(2026年8月〜11月)でやること
- 8月: 実験機組立・SwitchBot環境ログ開始・設置場所の温湿度実測1週間
- 9月: 給水器受入テスト→株なし通水テスト1週間→播種・栽培記録システム稼働
- 10月: 鉢上げ・育苗管理(徒長させないことに全集中)・群馬の借地情報収集を開始(農地バンク・農政課)
- 11月: 定植・誘引開始・第1果房の受粉/先進農場視察のアポ取り/販売先候補の売場調査
公開中: 水耕トマト初号機 組立説明書
Phase 0実験機の全組立手順(構成図・部材図鑑・8ステップ)