日本語圏で伸び始めたのは2024年の秋です。英語圏の火付けが2020年8〜9月ですから、約4年の遅れがあります。技術記事サイトQiitaのObsidian記事は、2024年の89件から2025年は388件へ、4.4倍に増えました。ただし規模はまだ小さく、YouTubeの上位20本の再生数の合計は、日本語が約110万回、英語が約1,165万回。およそ10分の1です。
より大事なのは、入口が違うことです。英語圏では、思想が先にありました。ドイツの社会学者が使っていたメモ術「Zettelkasten」や、「Second Brain(第二の脳)」の考え方が先に流行り、その受け皿としてObsidianが選ばれています。第二の脳とは、頭の中の知識を外に貯めておいて、あとで引き出せるようにする、という考え方です。2022年の同名の本で広まりました。この章のはじめに出てきたAli Abdaalさんの動画「第二の脳」も、これのことです。ところが日本では、この思想がほとんど輸入されていません。Qiitaで「Zettelkasten」に触れた記事は、全期間で74件しかありません(Obsidianは1,278件)。
日本で伸びている動画は、「Notionとの違い」「最初にやる設定」「AIとのつなぎ方」の3つに偏ります。最も再生された日本語動画は、読書メモの話でした(30.5万回)。しかも生活・ビジネス系の一般向け動画(上位6本で114万回)が、開発者向け(上位5本で6.3万回)の約18倍あります。チャンネル名に「非エンジニア向け」と掲げる専門チャンネルまで成立しています。
実際の声も、思想ではなく実利です。
第二の脳と評判のObsidian、いまさら始めました。(中略)AIと私の知見や経験を共有して、仕事を効率化したかったから
— ワカシンさん(X、2026年7月30日)
貯めていくうちにAIの出力が一気に変わって
— 噛みくだくんさん(X、2026年7月29日)
Obsidianの代表Steph Angoさんも、日本での利用者増を受けて日本語化を優先していると語っています(2025年6月6日)。つまり日本では、思想を飛ばして、AIという実利から入った人が多数派です。海外の記事が語る「第二の脳」の思想から入ろうとすると、かみ合わない可能性が高いと言えます。