特別レポート 2026.08.01 使う? 使わない? 賛成と反対、両方読む

Obsidianは、あなたに必要か

賛成の声と反対の声を全部読んで分かった、本当に考えるべきこと

先に結論です。「Obsidianを使うべき?」という質問は、そのままでは答えが出ません。 中身のちがう4つの質問が、1つにまざっているからです。賛成する人と反対する人の話がかみ合わないのも、同じ理由です。どちらかがまちがっているのではありません。4つのうち、別々の質問について話しているだけなのです。

まず、あなたがどの質問の話をしているのか、30秒で切り分けます。

まずこれで決まる質問 質問 → タイプ → 点数
質問 1
使い道:書いたものを、あとで使う場面があるか
使い道がない → ツールを変えても同じ
質問 2
みんなで編集:チームで同時に編集するのが仕事の中心か
チーム中心 → Notionなどが向く
質問 3
使う端末:書くのも見るのも半分以上がスマホか
スマホ中心 → メインには向かない
質問 4
AIとの関係:もうフォルダとAIだけで回っているか
回っている → 無理に乗せなくてよい
順番が大事 先に「まずこれで決まる質問」、次にタイプ、最後に点数。逆にすると、点数が高いからという理由だけで、どう考えても無理な使い方を始めてしまいます。

まずは診断

30秒でわかる、かんたん診断

4つの質問に答えるだけです。Obsidianの機能を1つも比べなくても、ほとんどの人はここで答えが出ます。全部通った人だけ、6つの向き不向きチェックに進みます。

この4つの質問で消えなかった人だけ、この先を読む価値があります。英語のReddit・X・YouTubeと、日本語で公開されている実例をもとに、賛成派と反対派それぞれのいちばん説得力のある言い分を並べます。最後に、決めるための手順と、やめどきの目安を置きます。どちらかに誘導はしません。

背景

なぜ、いまObsidianの名前をよく聞くのか

このレポートにたどり着いた方の多くは、誰かに勧められたか、SNSで見かけて来ています。ではなぜ「いま」なのでしょうか。答えは、Obsidianの流行が一度きりではなく、3回目の波の途中だからです。そして3回目は、前の2回とまったく理由が違います。

流行は一度ではなく、3回来ています

1

1回目(2020年8月〜2021年):有名YouTuberが火をつけた

Obsidianが公開されたのは2020年3月です。その5ヶ月後、登録者666万人のAli Abdaalさんが「第二の脳」という動画を出し、138万回再生されました(2020年8月20日)。3〜4週間後には、Nick Miloさんの入門動画が238万回再生されます(2020年9月16日)。

大きなチャンネルが空気を作り、専門チャンネルが需要を受け止めた形です。公式サイトへの検索からの訪問は、2020年8月の367件から2021年12月の81,095件へ(Ahrefs調べ)、およそ221倍になりました。

2

2回目(2022年10月〜2023年):正式版が出た

2年間のお試し版を経て、2022年10月13日にバージョン1.0が出ます。掲示板Redditの参加者は、この前後のおよそ1年で52,218人から103,878人へ、約2倍になりました。ここまでは「メモの道具として便利だから」という、ふつうの流行です。

3

3回目(2024年11月〜現在):AIが手元のファイルを読めるようになった

いま起きているのがこれです。掲示板の参加者は約35万人で、1日あたり385人ずつ増えています。伸び「率」は1回目より低いのに、増えている人数そのものは過去最大という形です。なお、きっかけは2024年11月ですが、数字として目に見えて増えたのは2025年の後半でした。理由は次の節で説明します。

意外なことに、2023〜2024年はAIブームに乗れていません

この節に出てくる検索数は、いずれもアメリカでの月間検索数です(Ahrefs調べ)。

ChatGPTが公開されたのは2022年11月30日です。その月に「obsidian ai」という検索が跳ねました。ところが、そこからおよそ2年は横ばいのまま。公式サイトへの訪問の伸びも、2024年は前年比+23%まで落ちています。AIブームのまっただ中に、Obsidianは停滞していたのです。動きが出たのは2025年の後半でした。

「obsidian ai」の時期 月間の検索数
2022年11月(ChatGPT公開) 41件
2023年〜2024年 月120〜180件で横ばい
2025年7月 1,003件
2026年7月 4,147件

もっとはっきり出ているのが「obsidian mcp」という検索です。

「obsidian mcp」の時期 月間の検索数
2024年10月まで ずっと0件
2024年11月 7件
2025年3月 815件
2026年4月 4,154件

MCPというのは、AIが自分のパソコンの中のファイルや道具を直接読み書きするための、共通の決まりごとです。発表されたのは2024年11月25日。検索が立ち上がった月と、ぴたりと一致しています。

つまりObsidianを押し上げたのは、「AIが来たから」ではありません。AIが、手元のファイルを直接さわれるようになったからです。実際、AI関連のObsidian動画で再生数が多い10本のうち4本は、タイトルに「Claude Code」(パソコンの中のファイルを直接読み書きするタイプのAI)が入っています。利用者の言い方が、いちばん的確でした。

Claude Codeが動く世界では、ファイルの置き場所そのものがAIとのつなぎ口で、ただの文字がそのまま形式になる。
=つまり、AIが直接ファイルを読める時代には、フォルダがそのままAIの入り口になり、特別な形式に変換しなくても、ただのテキストがそのまま使える、ということです。 — Arnav Guptaさん(X、2026年1月21日

熱狂しているのは、会社ではありません

意外に思われるかもしれませんが、Obsidianを作っている会社自身は、AIをほとんど語っていません。アプリ本体にAI機能は入っておらず、連携はすべて利用者が自分で入れる拡張機能まかせです。公式ブログでAIに触れた数少ない一節も、こういう文脈でした。

コーディングエージェント〔自分でプログラムを書くAI〕が拡張機能の作成を加速させたので、審査の待ち行列は伸びる一方だった。 — Obsidian公式ブログ「The Future of Obsidian Plugins」(2026年5月12日)

Obsidianの拡張機能は、公開する前に運営の審査を受けます。「審査の待ち行列」とは、その順番待ちのことです。AIのおかげで拡張機能が作られすぎて、審査が追いつかなくなった——つまり会社にとってAIは、宣伝の材料ではなく運営上の困りごとだったわけです。

一方、代表のSteph Angoさん個人は、AIにObsidianの使い方を教えるための説明書きを公開しています。プログラムの共有サイトGitHubで、7ヶ月で43,909個の「気に入った印」(スター)を集めました(kepano/obsidian-skills、2026年8月2日時点)。

運営はさらに、公式の掲示板で「紹介プログラムやアフィリエイトをやるつもりはない」と回答しています(2026年5月30日)。紹介料で広まった流行ではない、ということです。

日本は4年遅れで、しかも入口が違います

日本語圏で伸び始めたのは2024年の秋です。英語圏の火付けが2020年8〜9月ですから、約4年の遅れがあります。技術記事サイトQiitaのObsidian記事は、2024年の89件から2025年は388件へ、4.4倍に増えました。ただし規模はまだ小さく、YouTubeの上位20本の再生数の合計は、日本語が約110万回、英語が約1,165万回。およそ10分の1です。

より大事なのは、入口が違うことです。英語圏では、思想が先にありました。ドイツの社会学者が使っていたメモ術「Zettelkasten」や、「Second Brain(第二の脳)」の考え方が先に流行り、その受け皿としてObsidianが選ばれています。第二の脳とは、頭の中の知識を外に貯めておいて、あとで引き出せるようにする、という考え方です。2022年の同名の本で広まりました。この章のはじめに出てきたAli Abdaalさんの動画「第二の脳」も、これのことです。ところが日本では、この思想がほとんど輸入されていません。Qiitaで「Zettelkasten」に触れた記事は、全期間で74件しかありません(Obsidianは1,278件)。

日本で伸びている動画は、「Notionとの違い」「最初にやる設定」「AIとのつなぎ方」の3つに偏ります。最も再生された日本語動画は、読書メモの話でした(30.5万回)。しかも生活・ビジネス系の一般向け動画(上位6本で114万回)が、開発者向け(上位5本で6.3万回)の約18倍あります。チャンネル名に「非エンジニア向け」と掲げる専門チャンネルまで成立しています。

実際の声も、思想ではなく実利です。

第二の脳と評判のObsidian、いまさら始めました。(中略)AIと私の知見や経験を共有して、仕事を効率化したかったから — ワカシンさん(X、2026年7月30日
貯めていくうちにAIの出力が一気に変わって — 噛みくだくんさん(X、2026年7月29日

Obsidianの代表Steph Angoさんも、日本での利用者増を受けて日本語化を優先していると語っています(2025年6月6日)。つまり日本では、思想を飛ばして、AIという実利から入った人が多数派です。海外の記事が語る「第二の脳」の思想から入ろうとすると、かみ合わない可能性が高いと言えます。

ここからは意見です

ここからは統計ではなく、複数の事業を経営する立場からの観察です

以下には数字の裏づけがありません。ひとつの見立てとして読んでください。

エンジニアという職種は、仕事をするだけで記録が残ります。書いたプログラム、変更のたびの説明文、課題管理の履歴。「記録しよう」と決めなくても、副産物として溜まる形になっています。

ビジネス職はそうではありません。日報は義務でつけるもので、読み返す人はまれです。商談で何を話したか、なぜその値段にしたか。それらはたいてい、本人の頭の中にしか残りません。

そして、AIは渡された文脈の分しか働けません。同じAIに同じ質問をしても、過去の判断の経緯や顧客の事情、失敗した提案を渡せる人と、渡せない人では、返ってくる答えの質が変わります。これまで差にならなかった「記録の有無」が、成果の差として表に出はじめたというのが、いま私が現場で感じていることです。

だとすると、Obsidianの本当の効用は機能ではないのだと思います。ノート同士をつなぐ機能も、拡張機能の豊富さも、他のツールにあります。Obsidianがやったのは、貯める動機と、貯める型を同時に与えたことです。ファイルは自分のパソコンにあり、中身はただの文字で、AIはそのフォルダをそのまま読める。だから「書いておくと後で効く」を実感しやすいのです。

ただし、この見立てには裏返しがあります。貯める動機が「AIに渡せるから」なのだとすれば、渡す相手も、渡す場面もない人には、その動機は存在しません。

この章のまとめ

だから、最初の質問はツールの話ではないのです

このレポートが最初に聞くのが「書いたものに使い道があるか」なのは、流行の中身がまさにこれだからです。3回目の波を作ったのは、AIが手元のファイルを読めるようになったことでした。裏を返せば、読ませたい手元のファイルがない人には、この波は関係ありません。流行っているかどうかと、あなたに必要かどうかは、まったく別の質問です。ここから先の手順は、後者だけを扱います。

読む前の注意

ネットの評判を、そのまま信じてはいけない理由

このあと出てくる「賛成票の数」や「再生回数」は、そのまま世間の意見の重さとしては読めません。理由は3つあります。

かたより1

ファンが集まる場所では、批判の声は伸びません

Redditの掲示板「r/ObsidianMD」(Obsidianファンが集まる場所)では、「やめました」という投稿は賛成票が0なのに、コメントだけ72件つくのがふつうです。反対に「Notionから乗りかえました」という投稿は賛成票が1,953。これは意見の強さではなく、その場の空気を測っているだけとも言えます。

かたより2

YouTubeでは「いらない」と言う動画ほど伸びます

登録者3,780人のチャンネル(Evan Burgerさん)が出した「Notion & Obsidianの時代は終わった」は13.3万回再生されました。登録者の35倍です。登録者2,540人(JB Russellさん)の「Obsidianを学ぶのをやめろ」も5.8万回で、23倍でした。小さなチャンネルにとって「Obsidianはいらない」は、一発逆転をねらえる強い切り口なのです。だから再生回数を、そのまま世間の意見の重さとして数えてはいけません。

かたより3

だまってやめた人の声は、どこにも残りません

何も書かずに使うのをやめた人は、そもそも数えられません。ここは、どうやっても埋められない穴です。

だから: このレポートが読んだのは「わざわざ書き込む人」の声だけです。不満が強い人と、熱心なファンほど書き込みます。ふつうの利用者を代表してはいません。ここから先は世間の意見ではなく、あくまでネットの声から見えた傾向として読んでください。

反対の言い分

「いらない派」の、いちばん説得力のある言い分

意外だったのは、Obsidianの機能そのものへの文句が少なかったことです。批判のほとんどは、ツールの外側の話でした。

反対A

そもそもメモの仕組み自体が、あなたには要らないかもしれない(いちばん多く、いちばん本質的)

「仕事もメモも、つながりのないバラバラの集まりになった。ただ集めただけで、それ以上の意味がなくなった」。これがいちばん多かった、やめる理由です。Redditの別の掲示板「r/Zettelkasten」(海外で有名なメモ整理術の名前がついた掲示板)では「もし明日それを全部消したら、あなたの仕事は本当に困りますか?」という問いかけが支持を集めていました。ツールを比べているだけでは、絶対に出てこない問いです。

反対B

ツールをいじること自体が、目的になってしまう

いくらでも自分好みに変えられるところが、いちばん悪い。細かい調整に何時間も溶ける。 — felix氏(X)(出典

ノートを入れる保管庫(Obsidianではvaultと呼びます)の見た目を整えるのに1日10時間を使い、成績が落ちて次の学期に登録できなくなりそうだと本人が書いている人までいます(Redditの掲示板r/PKMSの投稿。投稿者名は伏せられています)。「こういうメモ管理ツールが魅力的なのは、自分がすべてを支配できている気分になれるからだ」という指摘もありました。機能がいいか悪いかとは、まったく別の話です。

反対C

AIが来たので、間に立つツール自体が要らない

いちばん再生された反対意見は、海外の技術系YouTuber・ICOR with Tomさんの動画「Claudeがノートアプリを殺した」で、約44万回でした。

どのメモ管理ツールも、開発者が用意した枠の中でしか自由になれない。必要なのはフォルダ1つとAIだけだ。 — ICOR with Tom氏(動画

元Tesla AI責任者のKarpathyさんが2026年4月に公開した「llm-wiki」という考え方を、実際に作ってみせた動画もあります。必要なのはフォルダ5つとファイル3つだけだと具体的に示しました。ただし言いたいのは「始めるのにObsidianは要らない、ややこしくするな」です。すでにフォルダで回っている人には当てはまりません。

反対D

チームでは使えない。スマホでも弱い

海外で知られた技術系の発信者Theoさん(t3.gg)は、こう言います。

6人で同時に編集するのは無理だ。比べる相手はNotionではなく、Apple Notesのほうが正しい。 — Theo氏(t3.gg)(動画

この指摘に、賛成派からまともな反論は出ていません。スマホも弱点です。9.7万ファイル(極端に大量のノートを入れた例)を入れた人からは、Androidで起動に2分以上かかるという報告が出ています。ファンが集まるr/ObsidianMDでも、「スマホ版は使いにくい」という投稿に賛成票406が集まりました。「パソコン版をそのままスマホの画面に押しこんだだけで、使い勝手を考え直していない。Google Keepのように、開いてすぐ書く、ができない」という中身です。

おもしろいことに、「やることリストの管理だけはうまくいかない」という一部だけやめる話(賛成票235・コメント276)には、強い共感が集まります。でも「全部やめる」には共感が集まりません。この差は、あとで出てくる「1つのアプリで全部やらない」という話につながります。

反対E

AIにノートを直接書きかえさせると、こわれる

AIが勝手にファイル名を変えて、リンクが切れる。似たノートが大量に増える。ノートの先頭に付けるラベル情報(frontmatter)がこわれる。「ほうっておけばAIが育ててくれる」は成り立ちません。この手入れの手間が決め手になってやめる、という意見です(対策は「使うと決めたら」の章にあります)。

賛成の言い分

「使うべき派」の、いちばん説得力のある言い分

賛成側も、盛り上がりではなく実利で語っています。中心にあるのは「自分のデータを自分で持てること」と「使い始めるのが楽なこと」です。もう1つ、2026年に実感として語られたのが「サービスをやめると、自分のデータを取り出しにくくなる」問題でした。

賛成A

ただの文字ファイルだから、長生きする

4年間使い続けた人が「何でも質問してください」という投稿(賛成票452)でこう書いています。「markdown——どんなアプリでも開ける、古びない文章ファイル形式です——で自分の書いたものを自分で持つことに、私はとりつかれている。50年後も使っていると本気で思っている」。「こういうソフトを作る会社も商売でやっている。同じ市場の圧力を受ける」とも言っています。

賛成B

その心配は、2026年に現実になった

Notionをやめた理由は、だいたいこの順番で並びます。ネットがないと使えない。次に、動作が遅い。次に、やめようとするとデータを取り出しにくい。最後に、AI機能を勝手に入れられた。NotionからObsidianへ移った報告は賛成票1,953と1,357で、数も熱量も目立ちました。逆にObsidianからNotionへ完全に戻った話は、今回集めた範囲では少数です。多くの人が行き着く答えは「Notionはチームで、Obsidianは自分の頭の中に」という役割分担でした。

賛成C

すぐ書き始められる

「開いた瞬間から仕事になる。Notionなどは見た目をいじる機能が多すぎて、中身より見た目に時間を使ってしまう」という声です。

賛成D

AIの記憶置き場として、ちょうどいい

plain markdown quietly won as the memory layer for agents
=つまり「かざりのない文章ファイルが、いつのまにかAIの記憶置き場として勝っていた」ということです。 — Mattejjko氏(X)(出典
賛成E

いちばんの弱点だった「表」は、公式が用意した

Notionから移って失うものは、何度も名指しされたかぎり、ほぼ1つだけでした。「恋しいのは——表。表。。」。Obsidian公式の表機能Bases(ノートの一覧をExcelのような表で見られる機能)が全員に開放されたときの告知は賛成票4,797で、今回集めた中で最高でした。「表があるからNotionに行った。Basesが出た瞬間に仮釈放された」という声も出ています。だから2024年より前の「表がないから無理」という比較は、前提が古い可能性が高いです。

日本の事例

日本の事例も、骨組みは同じです

新居祐介さん(opus合同会社)は、事業ごとのメモ、決めたことの記録、数十行にしぼったAI向けの指示書で「外の脳」を作りました。アキさん(Assetly/不動産の相続)は、お客さま1人につきファイルを1つ用意しています。ファイルの先頭にラベル情報を書いて、お客さま管理の仕組みにしました。毎朝AIに、連絡もれがないか調べさせています。2人に共通するのは、機能を足す拡張(プラグイン)の数ではなく「AIに読ませる前提でファイルを設計する」ところで差がついている点です。

両方を読むと

賛成と反対は、実は同じことを言っている

「いらない派」と「使うべき派」は、実は同じ前提から出発しています。分かれ道は1つだけです。そしてそこに、2026年ならではの事情が乗っています。

同じところ

出発点は、どちらも同じです

どちらも「AIに働かせて、人は細かく分類しない」「自分のパソコンの中の文章ファイルに知識をためる」から始まっています。ちがいは「そのフォルダをObsidianで見るかどうか」だけです。

ふしぎなところ

AIがきらいな人にも、AIを使いたい人にも選ばれています

「AI機能がまったくないNotionの代わりを探している」という投稿があります。そこでほぼ全員一致で挙がった答えが、Obsidianでした。「AI機能を1つも入れていない、数少ない有名なメモ管理ツール」だからです。

その一方で、「自分のパソコンの中にある、ただの文章ファイル」という性質は、AIにとっても扱いやすい土台になっています。AIを入れないことも、好きなAIをあとから外側でつなぐことも、両方できます。データを取り出しにくい話が現実になった年だからこそ、この「いま決めなくていい」という性質の値打ちが上がりました。

AIに反対する側で、いちばん切れ味のよい整理も紹介します(賛成票139)。「目的がノートの数とリンクの数と大きな図なら、そうだ、AIがそれを殺した。でも目的が『前に見た情報を、あとで意味のつながる地図にすること』なら、AIとは別々の話だ」。これに対する反論は「めんどうな作業を外に出すことと、考えることを外に出すことは、同じではない」でした。決着はついていません。

あえて反対から!

あえて反対側から言うと:「他に持ち出せる」は条件つきです

Obsidianには専用の書き方(ノート同士をつなぐ [[リンク]] など)があり、それは他のアプリにコピーしても動きません、という話です。[[wikilink]](ノート同士をつなぐ書き方)、囲み枠の書き方、条件に合うノートの一覧を自動で作る書き方。これらはみんな共通のルールではなく、事実上Obsidianだけの書き方です。ファイル自体は他のアプリでも開けます。でもリンクも表も一覧も、そのままでは再現されません。持ち出せるのは文字だけで、あなたが作った構造は持ち出せないのです。 つまり、結局Obsidian専用の書き方に縛られる、という別の問題があります。

「50年後も読める」を本気で守りたいなら、条件を2つ足してください。1つ目は、大事なノートの組み立てをObsidian独自の書き方に頼らないこと。2つ目は、3か月に1回、ふつうの文章ファイルとして書き出してみて、何がこわれるか確かめることです。

これをやっていないなら、正確には「縛られていない」ではありません。「縛られ方が、まだ小さい」だけです。

決めるための手順

決めるための手順:質問 → タイプ → 点数の順に進む

今回の調査でいちばん大事だったのは、使うかどうかがObsidianの良し悪しではほとんど決まらないという事実です。先に「まずこれで決まる質問」、次にタイプ、最後に点数。 逆にすると、点数が高いからという理由だけで、どう考えても無理な使い方を始めてしまいます。

5-1. まずこれで決まる質問(1つでも当てはまったら、点数を見ずに答えが出ます)

質問 当てはまる人 いまの答え
質問1 使い道 記事・お客さま向けの資料・決めごとなど、書いたものを使う場面がない。読み返す習慣を作る気もない ツールを変えない。 ノートアプリのせいではありません
質問2 みんなで編集 複数人で同時に編集すること、みんなで使うデータベース、見られる人の管理が仕事の中心 Notionなどを使う。 Obsidianは自分ひとり用の部分だけにする
質問3 使う端末 毎日の「書く」「見る」の半分以上がスマホ 見送るか、読むだけのサブにする。 メインの保管庫にはしない
質問4 AIとの関係 すでにフォルダと文章ファイルとAIだけで実務が回っている 無理に乗せない。 あとから同じファイルにかぶせられます(タイプ③へ)
質問1で止まった人が別のメモ管理ツールに移ることは、ネット上でよくこう返されます。「1つの仕組みを、7つの仕組みに置きかえただけだ」。

5-2. タイプ別の答え

タイプ 1

① チームとまざっている人(質問2に当てはまる)

分けるのが正解です。 「チームはNotion、自分の頭の中はObsidian」は負けではなく、多くの人が行き着く形です。みんなで使うものはObsidianに入れない、という線を先に決めてください。その線が引けないなら、Notion1本のほうが安定します。

タイプ 2

② 集めるけれど読み返さない人(質問1のうち「読み返す習慣」だけがない)

始める前に、週1回15分の「読み返す時間」を予定表に入れてください。 2週間続かなければ、ツールを変えても結果は同じです。続いたなら、そのとき感じた不便が、そのまま始める理由になります。

タイプ 3

③ AIに全部まかせる人(自分では書かない)

まずは、かんたんなフォルダと、Git(変更の記録を残して、いつでも元に戻せる仕組み)と、人が承認する手順だけで始めてください。 それで回るなら、それが完成形です。あとから「見るための画面」(リンク・図・表・検索)を、同じファイルの上にかぶせられます。この順番なら、失うものがありません。

タイプ 4

④ ひとりで考え、パソコン中心で、使い道もある人(原稿・決めごとの記録・お客さまメモ)

向いています。 ただし条件が2つ。「30日ためして決めるルール」を先に書くことと、Obsidian独自の書き方をなるべく使わないことです。表機能のBasesは「表がなくて困ってから」で十分です。

5-3. 向き不向きチェック(6つ/質問を全部通った人だけ)

使うか使わないかではなく、「どう始めるか」を決めるためのものです。

# 見るところ 向いている(+1) 向いていない(−1)
1 書いたものの使い道 使う場面がはっきり決まっている 「いつか役に立つ」で集めている
2 読み返し 定期的に見直す習慣がある 書いて終わり
3 よく使う端末 パソコンが中心 移動中に書くことが多い
4 いじりすぎない自信 困ったときだけ直す 最初に理想の形を作りこむ
5 ひとりか、チームか ひとりで考える・学ぶが中心 人とのやりとりが中心
6 データを自分で持ちたいか 取り出せなくなるのは本当に困ると感じる クラウドの便利さを優先する
+4以上 → そのまま始めて大丈夫です。0前後 → まずはフォルダと文章ファイルだけで1か月ためしてください。不便を感じてからObsidianをかぶせます(逆にすると、4番目の「いじりすぎ」で時間が溶けます)。−2以下 → いま必要なのは、たぶんノートアプリではありません。

使うと決めたら

「使う」と決めた人へ:続くかどうかは、根性ではなく作り方で決まります

3つの調査すべてが、同じ警告をしていました。

most Obsidian setups die in week two not because of discipline but because of design
=つまり「ほとんどの保管庫は2週目で死ぬ。原因は根性ではなく、作り方だ」ということです。 — Dami-Defi氏(X)(出典
  1. 1

    人が作った完成品のテンプレートから始めない

    「YouTuberは、自分にお金を払ってくれるアプリに乗りかえていく。彼らはお金をもらっていて、あなたはもらっていない」という指摘があります。

  2. 2

    最初に拡張機能を入れない

    数週間は何も入れずに使ってください。自分が何をしたいか分かってから探します。Dataview(Basesと似たことができる非公式の拡張)のような有名な拡張でも、開発が止まることがあります。公式のBasesで足りないか、先に確かめましょう。

  3. 3

    1つのアプリで全部やらない

    とくに「やることリスト」は、別のツールと併用するのが現実的です。「書き足すのと探すのに30秒以上かかったら失敗」という自分ルールは役に立ちます。

  4. 4

    整理のやり方を、教科書どおりにやらない

    よく使われているのは、有名な整理法を3つゆるく混ぜた形です(PARA・Zettelkasten・MOC。どれも海外で有名なメモ整理術の名前です)。PARAという整理術を作った提唱者自身も「PARAとはAIに渡す情報の、いちばん小さいまとまりのことだ」と言い直しています(発言の出典URLは今回の調査では確認できませんでした)。

30日ためして決めるルール —— 先に「やめる条件」を書いてから始める

いちばん高くつくのは、合わないものをなんとなく持ち続けることです。

始めるときに、1つだけ数えてください。気分ではなく数で見るためです。過去1か月で、昔の自分のノートを実際に使い回した回数を記録します(記事・提案書・決めごと・返信など)。30日後に、同じ数え方でもう一度数えます。これが質問1の答え合わせになります。

30日後の「やめどきの目安」(1つでも当てはまったら、やめるか、使い道を1つにしぼる)

  • 使い回した回数が増えていない(0回のままなら、そもそもメモの仕組みが要らなかった、とほぼ言い切れます)
  • 見た目の調整や整理に、週3時間以上を使ってしまった
  • スマホで開けないせいで、仕事が止まった
  • AIに書かせた結果、リンク切れ・重複・ラベル情報のこわれを、人が追いきれていない
やめるのは失敗ではありません。質問1やタイプ②③に分類し直しただけです。「書くのはフォルダ、見るのはObsidian」と使い方を小さくするのも、ちゃんとした選択肢です。どれも当てはまらなければ、あなたの保管庫は2週目の山を越えています。

ほぼ全員が同意していたこと

AIと組み合わせるとき、やってはいけないこと

2026年7月の投稿に、実務のルールとしていちばんよくできた文がありました。

AIは、あくまで提案する役です。ノートを分ける・つなぐ・名前を変える・要約する。どれも提案するのは構いません。ただし実際の変更は、必ず自分が見比べられる形(変更前と変更後の差分)にして残します。Gitがあれば元に戻せますが、もっと大事なルールは「だまって書きかえさせない」ことです。AIが直したところと自分で直したところの区別がつかなくなった瞬間、その保管庫は記憶であることをやめ、呪われたファイル置き場になります
やらせてよい

やらせてよいこと

やらせてよいのは、探すこと、思い出させること、タグの提案、ラベル情報の整え方の提案、つなぎ先の候補出し、要約の下書きです。

やらせない

やらせてはいけないこと

やらせてはいけないのは、確認なしの名前変更、まとめて一気に書きかえること、だまって構造を変えることです。

松濤Vimmerさん(2026年7月)は「人が考えるための場所と、AI用の記憶は、別々に作るべきだ」としています。そのうえで、AIが書いたものをいったん別の置き場に置き、承認してから本体に移す方式を提案しています。

AIと組み合わせることが、続ける助けになるのか、こわす原因になるのか。評価は割れています。Xでは「AIを組んだおかげで挫折せずに済んだ」という報告が並びます。一方Redditでは、だまって書きかえられることへの警戒が強い。両方を読んで見えてきたのは、分かれ目はAIを使うかどうかではなく、AIに書きかえる権限を渡しているか、変更を自分で見比べているかだということです。

このレポートを出している私たちも、約3,000枚のノートをAIの長期記憶として使っています。 ただしそこに来るまでに、AIにノートをこわされ、自動処理がだまって止まり、3割が保存されていなかった、という失敗をしました。見張る仕組みと承認の仕組みを足して、ようやく安定しています。価値が決まるのは、導入したかどうかではありません。どう運用するかです。

まとめ

おわりに

いちばん鋭い批判は「Obsidianが悪い」ではありませんでした。「あなたには、メモの仕組みそのものが要らないかもしれない」でした。

いちばん強い擁護も「便利だから」ではありませんでした。「AIを入れるか入れないか、どのAIを外からつなぐかを、あとから自分で決められる」でした。ただしこれが成り立つのは、Obsidian独自の書き方を増やしすぎないことと、だまって書きかえさせないこと。この2つとセットのときだけです。

答えるべきことは4つだけです。書いたものに使い道はあるか。誰と使うか。どの端末で使うか。AIにどこまでまかせるか。 答えが出たなら、ツールの比較表はもう要りません。出なかったなら、30日ためして決めるルールを書いて、実際に触るのがいちばん早いです。ここまでの内容は、他人が公開した経験から組み立てた推測にすぎないのですから。

調べたもの:英語のRedditの掲示板4つ(重複を除いた投稿851件。コメントは31スレッド分を全文)、X(日本語・英語)、YouTube(主要な3本を字幕の全文で確認)、日本語で公開されている実例。数字は2026年8月1日時点のものです。ネットに書き込まれた声だけが対象で、書き込まない人は含まれていません。

出典

主要出典一覧(46項目・計50URL)

本文で紹介した話のうち、URLで確認できるものです。人名を出している発言には、すべて出典リンクを付けています。数字は、調べた時点のものです(452pt=賛成票452、72c=コメント72件)。