結論(即答): Jevとは
Jev(ジェブ)は、米国のTypeSafe AIが2026年9月15日に公開したAIモデルです。
文章を読んで判断はしますが、文章は書きません。返すのはあらかじめ決めた選択肢のどれに当たるか、段階のどこに当たるか、条件が成り立つ確率の3種類だけです。選択肢ごとの確率と、答えの確かさを表す confidence も一緒に返ります。
公式はJevを「System One モデル」の最初の1つと呼びます。料金は入力100万トークンあたり0.042ドルで、出力は無料です。応答時間は公式の表示で70〜500ミリ秒、当社の実測で約0.4〜0.5秒でした。
検索結果に出てくる日本脳炎ウイルス(JEV)とは別物です。
出典: TypeSafe AI 公式ブログ「Introducing System One Models & Jev」、公式ドキュメント Models(2026年10月4日確認)
開発元のTypeSafe AIはどんな会社か
TypeSafe AI(法人名 TypeSafe AI, Inc.)は、米国サンフランシスコに拠点を置くAIの開発会社です。創業メンバーは、CEOのDiogo Almeida氏、COOのSasha Sheng氏、CTOのErik Gafni氏の3人です。
Almeida氏はOpenAIとGoogle Brainの出身で、ChatGPTの土台になったRLHFとInstructGPTの共同発明者だと公式のチーム紹介にあります。公式ブログによると、2年間の非公開の開発を経て、最初のモデルとしてJevを公開しました。
2026年10月4日時点で公開しているモデルはJevだけです。モデルのほかに、ブラウザで試せるPlayground、PythonとJavaScriptのSDK、コーディングAI向けのスキルを配布しています。
出典: 公式チーム紹介、公式の利用規約(所在地)、公式ブログ、公式ドキュメント Models(2026年10月4日確認)
読み方と名前の由来
公式の読み方の表記は見当たりません。当社は「ジェブ」と読んでいます。
名前の由来は、19世紀英国の経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons)です。公式ブログにそう書かれています。
蒸気機関の効率が上がって、かえって石炭の需要が増えたことを指摘した人です。TypeSafe AIは、AIの判断が安くなるほど使い道が桁違いに増える、という見立てをこの名前に込めています。
「System One」の名は、『ファスト&スロー』で広まった「速く直感的な思考(システム1)」から来ています。数秒で下せる判断をJevが受け持ち、熟考が要る判断は人やLLMに残す、という分担です。
出典: TypeSafe AI 公式ブログ(2026年10月4日確認)
Jevにできること・できないこと
Jevにできるのは「答えを選択肢で書き出せる判断」です。文章・コード・説明は作れません。
| できること | できないこと |
|---|---|
| 問い合わせを「配送・請求・その他」に分ける | 返信の文章を書く |
| 緊急度やリスクを、決めた段階で採点する | 判断の理由を文章で説明する |
| 「この文書に○○と書いてあるか」を確率で答える | コードを書く、チャットで会話する |
| 検索候補を質問との関連度で並べ替える | 金額の計算や日付の前後比較を正確に行う |
| AIの回答や引用が資料と合っているか確かめる | 画像・音声・動画を読む |
公式によると、Claude Code や Cursor などのコーディングAIの中身はJevに置き換えられません。コーディングAIには、Jevを呼び出すコードを書かせる使い方をします。そのための公式スキルも配布されています。
出典: 公式ドキュメント Jev with coding agents、Jev 1.13 jaggedness(2026年10月4日確認)
仕組み: 材料(state)と質問を渡し、確率で受け取る
Jevに渡すのは「判定する材料(state)」と「質問」の2つです。質問は3つの型から選び、1回の呼び出しに複数入れられます。
| 質問の型 | 聞き方 | 返る値 |
|---|---|---|
| Choice(選択) | どれに当たる? 選択肢は最大255個 | 選んだ答え、選択肢ごとの確率、confidence |
| Score(採点) | どの段階に当たる? 段階は自分で定義 | 当てはまる段階の値、段階ごとの確率、confidence |
| Noul(当てはまるか) | この条件は成り立つ? | 「はい」である確率(0〜1) |
質問はそれぞれ独立に、同じ材料に対して並行で判定されます。質問を増やしても応答時間はほとんど変わらない、と公式は書いています。
確率が「較正」されている
Jevは答えに付く確率が実際の当たり外れに合うよう訓練されています。「90%」と答えたものを集めると約9割が当たる、という状態です。公式はこれを較正(calibration)と呼び、RLCDという独自の訓練方法でこの性質を持たせたと説明しています。
ただし較正は、多数の答えをまとめて見たときの性質です。1件ごとの答えが正しいことまでは約束しません。
confidence で「自動でやるか、人に回すか」を決める
confidence は、Choice と Score の答えに付く確かさの指標です。Noul には付きません(確率そのものが確かさを表すため)。
confidence が高い答えはアプリ側で自動処理し、低い答えは人や上位のLLMに回します。境目の値はアプリ側のコードで決めます。当社は資料の読み取り検証で閾値を0.95に置きました。
出典: 公式ドキュメント Primitives、Choice、Noul、Confidence(2026年10月4日確認)
LLM・小型モデル・ルールとの違い
違いは「何を返すか」です。LLMは文章を返し、Jevは型の決まった値と確率を返します。
| 手段 | 返すもの | 向く判断 | 速さ | 費用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ルール(プログラム) | 計算結果・一致/不一致 | 計算や文字の一致で答えが決まる判断 | 一瞬 | ほぼ0 |
| Jev | 選択・点数・確率 | 選択肢を書き出せる意味の判断。学習データ不要 | 約0.4〜0.5秒(当社実測) | 1回 約0.00001〜0.0006ドル(当社) |
| 小型のLLM | 文章・抜き出した値 | 文章にする、値を抜き出す | 数秒(当社の試作で2〜3秒) | 1資料 約0.05ドル(当社) |
| 上位のLLM | 文章・コード・画像の読み取り | 込み入った判断、画像を見る判断 | 当社は未計測 | 18資料で約13ドル(当社、落ちた値だけ) |
迷ったら「答えを選択肢で書き出せるか」で決めます。書き出せればJev、文章が要るならLLM、計算で出せるならルールです。
公式ブログは、同じ水準の判断でLLMより40〜200倍速いとしています。
公式サイトのトップは「193.6倍速く、444.6倍安い」と掲げています。注記は「System One に向く作業の流れでの比較」で、当社は未検証です。
精度については、開発元のCEOが4つの業務フローの平均で67.8%と発表しました。比較に出したGPT-5.6 Solの74.1%には届きません。売りは精度より、速さと費用です。
出典: TypeSafe AI 公式ブログ、公式サイト、開発元CEOのX投稿(2026年10月4日確認)
料金と無料枠
料金は入力100万トークンあたり0.042ドル(10億トークンで42ドル)です。トークンは、AIが文章の量を数えるときの単位です。出力は無料で、費用は渡した文章の量だけで決まります。対象は現行版の jev-1.13.0 です。
1ドル=158円で換算すると、入力100万トークンあたり約6.6円です(2026年10月2日の終値157.83円を丸めた概算。Trading Economics、2026年10月4日確認)。
| 使い方 | 1回の入力 | 月1万回 | 月10万回 | 円換算(月1万回 / 月10万回) |
|---|---|---|---|---|
| 短い文に「はい/いいえ」を1問(当社実測) | 約310トークン | 約0.13ドル | 約1.3ドル | 約21円 / 約210円 |
| 検索候補20件の並べ替え(当社見積り) | 約4,800トークン | 約2ドル | 約20ドル | 約320円 / 約3,200円 |
| 資料1件の読み取り検証(当社実測) | 約14,000トークン | 約5.9ドル | 約59ドル | 約930円 / 約9,300円 |
円換算は1ドル=158円の概算です。
公式ドキュメントと公式ブログには、無料枠の記載がありませんでした(2026年10月4日確認)。無料枠があると書く解説記事もありますが、公式では確認できませんでした。
Vercel AI Gateway など別のサービスを経由すると、料金の請求元や上限の扱いが変わります。経由先の表示も確認してください。月の費用の考え方は Jev ユースケース図鑑の「料金と始め方」 にも載せています。
出典: 公式ドキュメント Models(2026年10月4日確認)
登録と始め方
始め方は3通りです。公式のコンソールで登録するか、Vercel AI Gateway か Cloudflare Workers AI を経由します。
TypeSafe AIは2026年9月15日に早期提供(early access)を始めました。
待機リスト(waitlist)の開発者から順に受け入れると発表しています。
日本からの登録を禁じる記載は、公式の顧客契約にありません。国の制限として書かれているのは、米国の禁輸対象国からの利用禁止だけです(2026年10月4日確認)。当社も日本から利用しています。
公式コンソールを使う手順は次のとおりです。
- Playground にログインし、文章を貼って質問を足します。コードを書かずに結果を見られます
- コンソールでAPIキーを発行し、環境変数
TYPESAFE_API_KEYに入れます - SDKを入れます。Pythonは
pip install typesafe-sdk(3.10以上)、JavaScriptはnpm install @typesafe-ai/sdkです - SDKを使わない場合は、HTTPで
POST https://api.typesafe.ai/v1/systemoneを呼びます
モデル名には、版を固定した jev-1.13.0 と、最新の正式版を指す jev-latest があります。jev-latest は、新しい版が出るとそちらを指すようになります。閾値を決めたら、版を固定して使います。
| 呼び出し先 | モデル名 | 必要なもの |
|---|---|---|
| TypeSafe AI 公式API | jev-1.13.0 / jev-latest |
TypeSafe AI のアカウントとAPIキー |
| Vercel AI Gateway | typesafe-ai/jev |
Vercel のアカウントと AI Gateway のキー |
| Cloudflare Workers AI | typesafe/jev |
Cloudflare のアカウント |
当社の呼び出しは Vercel AI Gateway 経由で、TypeSafe AI のコンソールは使っていません。
出典: 公式 Quick start、公式 Models、Vercel AI Gateway のモデルページ、Cloudflare のモデルページ(2026年10月4日確認)
呼び出しの最小例
公式 Quick start の例から、Choice の質問1つだけを残したものです。問い合わせ文(state)を渡し、担当チームを3つから選ばせます。
送る内容:
{
"state": "Hi, I've been trying to connect my Stripe account for 3 days and the integration keeps failing. I'm losing sales. Please help ASAP.",
"model": "jev-latest",
"questions": {
"department": {
"type": "choice",
"instructions": "Which team should handle this",
"criteria": {
"billing": "Payment or subscription issues",
"technical": "Bugs or integration problems",
"sales": "Pricing or account questions"
}
}
}
}
返ってくる内容:
{
"model": "jev-1.13.0",
"answers": {
"department": {
"type": "choice",
"choice": "technical",
"confidence": 0.78,
"probabilities": {
"technical": 0.85,
"sales": 0.0,
"billing": 0.15
}
}
}
}
選んだ答えが choice、選択肢ごとの確率が probabilities、答えの確かさが confidence に入ります。公式の例は3問を1回で送っており、返る値はその3問分を載せたものです。ここでは1問分だけを抜き出しました。
出典: 公式 Quick start(2026年10月4日確認)
対応する入力と長さの上限
受け付けるのはテキストだけです。形は文字列、JSONのオブジェクト、テキストの配列の3つです。画像・音声・動画は渡せません。
| 項目 | 公式の値(2026年10月4日確認) |
|---|---|
| 入力の種類 | テキストのみ(文字列・JSON・テキストの配列) |
| 1回の長さ | 64Kトークンまで |
| 材料と一番長い質問の合計 | 32Kトークンまで |
| 利用上限 | 毎秒10万トークン・毎秒80リクエスト |
| 学習への利用 | 顧客のリクエストと応答は学習に使わない |
| 自社データでの追加学習 | できない(全員が同じモデルを使う) |
9月28日の確認時点の利用上限は、毎秒25万トークン・毎分1,200リクエストでした。公式は需要に応じて予告なく変えると書いています。
画像を扱いたいときは、先に画像を読めるモデルで文章にしてから渡します。当社の写真の試作では、この工程の分だけ2〜3秒遅れました。
出典: 公式ドキュメント Models、State(2026年10月4日確認)
日本語で使えるか
日本語でも使えます。ただし精度が一番高いのは英語で、他の言語は同じ水準ではないと公式は書いています。
日本語の製品資料から読み取った値の検証に、当社はJevを使いました。文字の違いは99.9%見抜いた一方、表の区切りの読み違いは見逃しました。閾値0.95を超えて通った誤りもあります。
そこで、プログラムによる照合のあとにJevで判定し、通らなかった値は上位のLLMに回す3段にしました。18資料・817値で、採用した値の誤りは0件です。
IVRyのテックブログも、日本語の評価セット19種でJevを試しています。日本語の試験問題では比較した2つのLLMより10ポイント以上高く、文の関係の判定ではやや低い結果でした(当社未検証)。
数値の詳細と出典は Jev ユースケース図鑑の「日本語の精度」 と 「当社の実測」 にまとめています。
出典: 公式ドキュメント Models(Language support)、IVRyテックブログ(Zenn)(2026年10月4日確認)
代表的な使い道5つ
公式が挙げる使い道は19あります。始めやすいのは次の5つです。
| 使い道 | Jevに聞くこと | 使う型 |
|---|---|---|
| 問い合わせの振り分け | 担当は配送・請求・その他のどれか、急ぎか | Choice・Noul |
| 検索結果の並べ替え | 各候補は質問にどれくらい関連するか | Score |
| AIの回答の検証 | この値や引用は、資料に書かれているか | Noul |
| 投稿や広告表現の点検 | 決めた基準に反する表現を含むか | Noul・Score |
| LLMの振り分け | この依頼は軽いモデルで足りるか | Choice |
当社は「検索サジェストの並べ替え」を本番で動かし、「資料から読み取った値の検証」にも使っています。
19のユースケースと、出典つきの公開事例11件は Jev ユースケース図鑑 にまとめています。公開事例だけを見たいときは 「公開されている活用事例」 からどうぞ。
出典: 公式ドキュメント Example use cases(2026年10月4日確認)
向かない仕事と注意点
公式は jev-1.13 の苦手な場面を9つ公開しています(2026年10月2日更新)。要点は次のとおりです。
- 書いたとおりに読む: 言外の意図はくみません。条件と境目の例を質問文に書きます
- 計算と数を数えるのが苦手: 合計や個数はコードで出し、Jevには意味の判断だけを聞きます
- 日付の前後比較が苦手: 年・月・日をコードで取り出して比べます
- 関係のない情報が多いと精度が落ちる: 質問に必要な部分だけを材料として渡します
- 選択肢の並び順で答えが揺れることがある: 順番を入れ替えて答えが変わらないか確かめます
- 文章は作れない: 文章が要る部分はLLMに任せます
当社が使って分かった注意点もあります。閾値0.95でも、表の区切りを読み違えた値が0.96〜0.97で通りました。
逆に、Jevだけで誤りを全部止めようとすると、正しい値の25%も落ちます。閾値を下回った値は捨てず、上位のLLMに回すのが当社の運用です。
当社が踏んだ失敗の一覧は Jev ユースケース図鑑の「使う前の注意点」 にあります。
出典: 公式ドキュメント Jev 1.13 jaggedness(2026年10月4日確認)
よくある誤解
「Jevは新しいチャットAIだ」: 会話も文章の生成もしないので、チャットAIとしては使えません。返すのは選択・点数・確率だけです。
「LLMより賢い」: 公式の発表でも精度はGPT-5.6 Solより低く、売りは速さと費用です。
「確率が高ければ正しい」: 1件ごとには言えません。較正は多数の答えをまとめて見た性質で、当社でも0.96の誤りが通りました。
「Jevで迷った分をLLMに回せば精度が上がる」: 上がり幅は小さいという研究があります。
2026年9月にarXivで公開された論文によると、JevとLLMは同じ問題で間違えやすい傾向があります。組み合わせても上積みは最大2.7ポイントでした(9月28日の改訂版の値)。当社が3段目で上位のLLMにページの画像を見せる方式を選んだのは、同じ文字情報を別のモデルに読ませても誤りを止められなかったためです。
出典: arXiv:2609.29769「JEV vs. LLMs as Rubric Judges」(2026年10月4日確認・要旨のみ)
よくある質問
Jevは無料で使えますか?
無料枠は公式ドキュメントに載っていません(2026年10月4日確認)。料金は入力100万トークンあたり0.042ドルで、出力は無料です。短い文に1問聞くだけなら、1万回で約0.13ドルでした(当社実測)。
ChatGPTやClaudeの代わりになりますか?
なりません。Jevは文章もコードも書きません。文章はLLM、選択肢で答えられる判断はJevと分けて使います。
「Jev AI」と「TypeSafe」は同じものですか?
TypeSafe AIが会社名、Jevがその会社のモデル名です。APIの窓口名は「System One API」です。
プログラミングができなくても試せますか?
試せます。公式コンソールの Playground で、文章を貼って質問を足すだけで結果を見られます。業務に組み込むときはプログラムが要ります。
日本語の精度はどのくらいですか?
英語ほど高くはありません。当社の日本語資料では文字の違いを99.9%見抜いた一方、表の読み違いは見逃しました。自分のデータで試してから使ってください。
PDFや画像は読めますか?
読めません。PDFは文字を取り出してから渡します。画像は読めるモデルで先に文章にしてから渡します。
応答はどのくらい速いですか?
公式の表示は70〜500ミリ秒です。当社の実測では約0.4〜0.5秒で、しばらく間が空いた最初の1回は約1秒かかりました。
自社のデータで学習させられますか?
できません。全員が同じモデルを使います。調整は質問文や選択肢の書き方で行います。
顧客のリクエストと応答は学習に使わないと公式は書いています。
版が変わると結果は変わりますか?
変わることがあります。jev-latest は、新しい版が出るとそちらを指すようになります。閾値を決めたら jev-1.13.0 のように版を固定します。
論文はありますか?
あります。2026年9月24日にarXivで公開された「JEV vs. LLMs as Rubric Judges」です。
採点基準に沿った審査で、LLMは費用が16〜325倍、時間が28〜350倍かかりました。値は9月28日の改訂版のもので、初版は29〜325倍・30〜220倍です。